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2021.09.16

親子で金メダル

こんにちは。言語聴覚士の吉田です。

少しずつ、秋の気配が近づいてきましたね。感動のオリンピックから1ヶ月ほど過ぎてしまいましたが、今日はご利用者様のオリンピックについてお話ししたいと思います。

 

私が担当しています20代のご利用者様は、約4年前の大学生の時に、交通事故により高次能機能障がいが残りました。歩いたり、声を出すことや食べることさえもできなくなってしまいました。私が訪問を開始した去年の12月末には、声が出せず、字を書いたり、文字を指さすこともできないため、お母さんとのコミュニケーションは、ほとんど取れない状態でした。

 

お母さんは『何とか娘と会話がしたい』という気持ちでいっぱいでした。そのような切なる思いの中、言語聴覚士である私と、作業療法士による訪問リハビリを続け、自宅ではお母さんが献身的に自主練習と介護を続けていました。今年の6月頃になると、リハビリの効果も出始め、やっと1文字だけささやき声が出るようになりましたが、なかなか会話するまでには至りませんでした。

 

           

言語療法の様子です。

 

しかし7月になると飛躍的に変化が現れ始めたのです。

そのきっかけとなったのは、あの白熱した2020東京オリンピックでした。自宅で毎日オリンピックを観戦し『がんばれ~!』『やった~!』『あーくやしい!』などと、何度も親子で声援を送り、応援を繰り返されたそうです。

すると、どんどん声が出るようになり、ささやき声から、はっきりした声に変わり始め、1文字から2文字へ、2文字から3文字へと、どんどん声が大きくなっていきました。

 

そして、ある日、私が訪問した時には、なんと『ハロー吉田くん!』と大きな声で挨拶をしてくれたのです。

 

お母さんも私もびっくりしました。つい、この間までほとんど声が出なかったのに、挨拶ができるようになり、少し会話ができるまで回復していることに感動を覚えました。

それは在宅でお母さんと娘さん親子で必死にリハビリに挑戦した証でした。お母さんにインタビューすると『約4年ぶりに娘の声を聞き、会話ができるようになりました。病院でのリハビリはとても大切でしたが、在宅でなければできないこともありますね。自宅でなければ、あんなに大きな声で白熱した応援はできませんでした。』と、笑顔で話されました。

4年ぶりに、お母さんとコミュニケーションが取れるようになり、口からご飯も食べれるようになったご利用者様と、献身的な介護を続けておられるお母さんにこそ、金メダルを受け取ってほしいと感じました。

ユーティー訪問看護ステーション 言語聴覚士 吉田宏樹